それでいい・・・
~略~
とうさんおおかみは、すえっこおおかみが、兄姉と一緒にあそばないのが気になってどうしてなのかわけを聞きます。
すえっこは「……にいちゃんが、ぼくのこと、まっすぐ ころがれないから だめだって いうんだ」と言います。
とうさんおおかみは「まっすぐ ころがるのか…。そりゃ、ちょっと むずかしいなぁ。どれ、ともかく いっぺん やって みせてごらん」と言います。
すえっこがころがるとじぐざぐ、うねうね、まがりくねってしまいます。やっっぱりまっすぐにころがれないと落ち込むすえっこに
「それでいいんだ」「まっすぐころがるのは、おおきくなってからだ」と安心させます。
でもすえっこはねえさんにのろまと言われ、しおれるのですが、とうさんおおかみは、「いっぺんやって みせてごらん」と走らせ「それでいい」「かぜのように はしるのは、おおきくなってからだ」といいます。
年上の兄姉のように上手にとんだり走ったりできないすえっこおおかみをとうさんおおかみが励ますのですが、とうさんおおかみの励まし方がとてもいいのです。
ふつうは、「そのうちできるようになるから心配しなくてもいいよ」という安心のさせ方になりがちです。
でもこのとうさんおおかみは、すえっこにいまできることをさせてみて「それでいいんだ」と自身をもたせます。
そしておおきくなればもっとうまくできるようになるよというわけです。
ただそのうち大きくなればできるようになるという元気づけではなく、とうさんおおかみのように、自分が今できることにまず自身をもたせ、そのうえで待つようにと安心させるところが大事なのだと考えます。
親は我が子をつい他の子と比べ遅れているのではないかと心配したり、これでいいのだろうかと不安になりがちです。
子どもに本をという場合も、基本的姿勢としてこのとうさんおおかみのようなせっかちにならない、ひとりひとりの子どものちがいを認めた見守り方に学ぶものがあるように思います。
~略~
(だから、子どもの本は面白い 広瀬 恒子著 新日本出版社p133-135)
青年に対する資本の過剰な要求
藤田……青年問題を現代の社会問題としてみたとき、大学を卒業しても定職に就けないという問題があります。あわせて、せっかく就職してもすぐに辞めてしまうという、いわゆる「七五三」(就職後三年以内に辞める割合が中卒七割・高卒五割・大卒三割)といわれている問題があります。
これは若者に原因があるという見方もあります。「若者が自立していない」「働く場があるのに働かない」「職業観の希薄さ」などなどと言われています。「会社をすぐ辞めてしまうのは我慢が足りない」「ちょっといやなことがあると辞めてしまう」と批判されます。「いまの若者は基本的な能力が欠如している」「コミュニケーション能力が不足している」「幅広い教養が不足している」と、きびしい若者批判が目につきます。
ただ、私からみますと、若者に対して過剰な要求をしてしいるという感じがします。職業意識の欠如といわれるからキャリア教育が必要だ、コミュニケーション能力が欠如しているから、口語表現法とか文章表現法という科目を設ける。それから問題発見能力や問題解決能力を身につけるような授業内容にしようと教員側への要求も出てきている。若者に欠如している能力を大学教育の中で、身につけさせなければならないということになっています。
こうした能力開発は、必ずしもすべて悪いわけではなく、若者が自立して生きていくことに結びつく面もあるわけですが全体として若者は、大学や産業界が突きつけてくる過剰な能力開発要求に適応することを求められていると思います。
では、社会はなぜ若者に対してそういう過剰な要求を突きつけてくるのか。経済的に考えてみると、グローバリゼーションが進行するなかで、産業構造や企業構造が変わってきたということを指摘しなければならないと思います。製造業が海外に移転して、国内産業は知識集約化する動きのなかで、資本の側は創造的人間の育成、エリート教育の必要性を強く主張します。
トヨタなどが推し進めている中高一貫の海陽学園(男子だけの全寮制)ですが、その建学の精神は、将来の日本を牽引する人間の育成、リーダーの育成ですから、資本の考えを象徴した教育をめざしているといえます。他方、エリート以外の人間に対しても、明確な仕事意識をもつこと、コミュニケーション能力や幅広い教養をもつことを要求するわけです。しかもそれは自己責任原則の下、受益者負担でやれということです。
こういう資本の側の動きの背景には、いわゆる「〇七年問題に象徴されるように、技能と勤労意識をもっていた世代が徐々に引退期に入ってくること、競争力の維持が困難になってくるのではないかという危機感があると思います。
編集部……資本の過剰な要求に応える人材育成ビジネスが繁盛する一方で、現場では非正規雇用化が進んでいるわけですから、努力しても報われないことが多いわけですね。
藤田……現在の若者の非正規化という現象の背後には、直接的には九〇年代にリストラが進行する過程で、新卒採用がずっと抑制されてきたということが大きいと思います。しかしそれだけではなく、コスト競争で、会社側が短期的な業績を追い求めている最近の傾向のなかで、若者を会社で長期にわたって育成するよりは、外部労働市場から派遣や請負という形で調達した方が、雇用責任や使用者責任を負う必要がないので、コスト的に有利だという判断があったことは間違いないと思います。
企業が短期的な業績を求めるようになったのは、基本的には九〇年代の規制緩和やグローバリゼーションの流れのなかで、株主重視の経営が強くいわれるようになってきたからだと思います。欧米に比較して日本はROE(株主資本利益率)が低いと言われ株価に影響しますから、リストラによるコスト削減で短期的にも利益を上げようとします。結局、社内で若者を教育するというコストを削減し、即戦力を求めるようになったわけです。
こうして企業側には社内でコストをかけて育成する余裕がなくなり、もちろん若者側の変化という面もありますが、大学や高校教育にキャリア教育をやれ、何々教育をやれという形で基礎的能力の育成を外部に任せるようになってきたと私は認識しています。
(「経済」〇六年一〇月号 特集 青年と現代社会 座談会「青年の状態と未来社会を考える」新日本出版社 p53-54)
~略~
若者が今直面している苦しみは、人間らしい雇用が根本から破壊されているなど、生活の苦しみだけではありません。
討論で、こもごも語られたように、その生活悪化の責任を、青年自身の「自己責任」であるかのように強制され、思い込まされ、人間としての誇りや尊厳を傷つけられ、ふみにじられている苦しみ、自己を否定されるような苦しみ、この二重の苦しみだということが切々と語られました。
~略~
(2006年1月16日新聞赤旗別刷り 日本共産党第24回大会 志位委員長の結語)
(3)職場の矛盾をどうつかむか
――3つの観点でとらえる
以上のべてきたように、今日、労働者の状態悪化はきわめて深刻なものですが、こうした職場の矛盾をとらえるさいにいくつか大切な観点があります。
~略~
第一は、これらの攻撃が、労働者・国民との矛盾を深めるとともに、財界・大企業の職場支配をみずから掘り崩す深刻な矛盾をつくりだしていることであります。
~略~
第二に、それにもかかわらず、政府・財界は、人間らしい労働の破壊による搾取の強化という道を、自らただそうとはしない。
~略~
ここには、マルクスが『資本論』のなかで、「資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの考慮も払わない」とのべた法則が働いているのであります。
~略~
第三に、財界・大企業による労働者への攻撃と、自民党政治の果たしている役割との関係が、こんなに見えやすいことはないということを、強調したいと思います。
(前衛臨時増刊号 職場問題学習・交流講座特集 2006年4月 日本共産党中央委員会p17-19 )
「もっと!もっと!と資本は若者に対して過剰な要求を・・・。そして、こども・若者の自己肯定感…。」
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とうさんおおかみは、すえっこおおかみが、兄姉と一緒にあそばないのが気になってどうしてなのかわけを聞きます。
すえっこは「……にいちゃんが、ぼくのこと、まっすぐ ころがれないから だめだって いうんだ」と言います。
とうさんおおかみは「まっすぐ ころがるのか…。そりゃ、ちょっと むずかしいなぁ。どれ、ともかく いっぺん やって みせてごらん」と言います。
すえっこがころがるとじぐざぐ、うねうね、まがりくねってしまいます。やっっぱりまっすぐにころがれないと落ち込むすえっこに
「それでいいんだ」「まっすぐころがるのは、おおきくなってからだ」と安心させます。
でもすえっこはねえさんにのろまと言われ、しおれるのですが、とうさんおおかみは、「いっぺんやって みせてごらん」と走らせ「それでいい」「かぜのように はしるのは、おおきくなってからだ」といいます。
年上の兄姉のように上手にとんだり走ったりできないすえっこおおかみをとうさんおおかみが励ますのですが、とうさんおおかみの励まし方がとてもいいのです。
ふつうは、「そのうちできるようになるから心配しなくてもいいよ」という安心のさせ方になりがちです。
でもこのとうさんおおかみは、すえっこにいまできることをさせてみて「それでいいんだ」と自身をもたせます。
そしておおきくなればもっとうまくできるようになるよというわけです。
ただそのうち大きくなればできるようになるという元気づけではなく、とうさんおおかみのように、自分が今できることにまず自身をもたせ、そのうえで待つようにと安心させるところが大事なのだと考えます。
親は我が子をつい他の子と比べ遅れているのではないかと心配したり、これでいいのだろうかと不安になりがちです。
子どもに本をという場合も、基本的姿勢としてこのとうさんおおかみのようなせっかちにならない、ひとりひとりの子どものちがいを認めた見守り方に学ぶものがあるように思います。
~略~
(だから、子どもの本は面白い 広瀬 恒子著 新日本出版社p133-135)
青年に対する資本の過剰な要求
藤田……青年問題を現代の社会問題としてみたとき、大学を卒業しても定職に就けないという問題があります。あわせて、せっかく就職してもすぐに辞めてしまうという、いわゆる「七五三」(就職後三年以内に辞める割合が中卒七割・高卒五割・大卒三割)といわれている問題があります。
これは若者に原因があるという見方もあります。「若者が自立していない」「働く場があるのに働かない」「職業観の希薄さ」などなどと言われています。「会社をすぐ辞めてしまうのは我慢が足りない」「ちょっといやなことがあると辞めてしまう」と批判されます。「いまの若者は基本的な能力が欠如している」「コミュニケーション能力が不足している」「幅広い教養が不足している」と、きびしい若者批判が目につきます。
ただ、私からみますと、若者に対して過剰な要求をしてしいるという感じがします。職業意識の欠如といわれるからキャリア教育が必要だ、コミュニケーション能力が欠如しているから、口語表現法とか文章表現法という科目を設ける。それから問題発見能力や問題解決能力を身につけるような授業内容にしようと教員側への要求も出てきている。若者に欠如している能力を大学教育の中で、身につけさせなければならないということになっています。
こうした能力開発は、必ずしもすべて悪いわけではなく、若者が自立して生きていくことに結びつく面もあるわけですが全体として若者は、大学や産業界が突きつけてくる過剰な能力開発要求に適応することを求められていると思います。
では、社会はなぜ若者に対してそういう過剰な要求を突きつけてくるのか。経済的に考えてみると、グローバリゼーションが進行するなかで、産業構造や企業構造が変わってきたということを指摘しなければならないと思います。製造業が海外に移転して、国内産業は知識集約化する動きのなかで、資本の側は創造的人間の育成、エリート教育の必要性を強く主張します。
トヨタなどが推し進めている中高一貫の海陽学園(男子だけの全寮制)ですが、その建学の精神は、将来の日本を牽引する人間の育成、リーダーの育成ですから、資本の考えを象徴した教育をめざしているといえます。他方、エリート以外の人間に対しても、明確な仕事意識をもつこと、コミュニケーション能力や幅広い教養をもつことを要求するわけです。しかもそれは自己責任原則の下、受益者負担でやれということです。
こういう資本の側の動きの背景には、いわゆる「〇七年問題に象徴されるように、技能と勤労意識をもっていた世代が徐々に引退期に入ってくること、競争力の維持が困難になってくるのではないかという危機感があると思います。
編集部……資本の過剰な要求に応える人材育成ビジネスが繁盛する一方で、現場では非正規雇用化が進んでいるわけですから、努力しても報われないことが多いわけですね。
藤田……現在の若者の非正規化という現象の背後には、直接的には九〇年代にリストラが進行する過程で、新卒採用がずっと抑制されてきたということが大きいと思います。しかしそれだけではなく、コスト競争で、会社側が短期的な業績を追い求めている最近の傾向のなかで、若者を会社で長期にわたって育成するよりは、外部労働市場から派遣や請負という形で調達した方が、雇用責任や使用者責任を負う必要がないので、コスト的に有利だという判断があったことは間違いないと思います。
企業が短期的な業績を求めるようになったのは、基本的には九〇年代の規制緩和やグローバリゼーションの流れのなかで、株主重視の経営が強くいわれるようになってきたからだと思います。欧米に比較して日本はROE(株主資本利益率)が低いと言われ株価に影響しますから、リストラによるコスト削減で短期的にも利益を上げようとします。結局、社内で若者を教育するというコストを削減し、即戦力を求めるようになったわけです。
こうして企業側には社内でコストをかけて育成する余裕がなくなり、もちろん若者側の変化という面もありますが、大学や高校教育にキャリア教育をやれ、何々教育をやれという形で基礎的能力の育成を外部に任せるようになってきたと私は認識しています。
(「経済」〇六年一〇月号 特集 青年と現代社会 座談会「青年の状態と未来社会を考える」新日本出版社 p53-54)
~略~
若者が今直面している苦しみは、人間らしい雇用が根本から破壊されているなど、生活の苦しみだけではありません。
討論で、こもごも語られたように、その生活悪化の責任を、青年自身の「自己責任」であるかのように強制され、思い込まされ、人間としての誇りや尊厳を傷つけられ、ふみにじられている苦しみ、自己を否定されるような苦しみ、この二重の苦しみだということが切々と語られました。
~略~
(2006年1月16日新聞赤旗別刷り 日本共産党第24回大会 志位委員長の結語)
(3)職場の矛盾をどうつかむか
――3つの観点でとらえる
以上のべてきたように、今日、労働者の状態悪化はきわめて深刻なものですが、こうした職場の矛盾をとらえるさいにいくつか大切な観点があります。
~略~
第一は、これらの攻撃が、労働者・国民との矛盾を深めるとともに、財界・大企業の職場支配をみずから掘り崩す深刻な矛盾をつくりだしていることであります。
~略~
第二に、それにもかかわらず、政府・財界は、人間らしい労働の破壊による搾取の強化という道を、自らただそうとはしない。
~略~
ここには、マルクスが『資本論』のなかで、「資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの考慮も払わない」とのべた法則が働いているのであります。
~略~
第三に、財界・大企業による労働者への攻撃と、自民党政治の果たしている役割との関係が、こんなに見えやすいことはないということを、強調したいと思います。
(前衛臨時増刊号 職場問題学習・交流講座特集 2006年4月 日本共産党中央委員会p17-19 )
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by dylj_west
| 2006-10-26 00:59
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