受け継ぐべきものは・・・
「1冊だけ見て信じちゃいけんのじゃなあ」
長年、学校図書館司書をつとめるUさんからこんな話を聞いたことがあります。
中学で「国際理解」をテーマにした授業があり、ひとりの生徒がトンガ王国の人口を事典で調べていました。
たまたま別のもう一冊の資料を見たら、人口数が違っていておかしいなと気づきました。
どうして違うのか不思議に思い調べたところ、トンガには小さな島がたくさんある上、出かせぎに行く人がとても多い国なので年代による違いが出てくることもあり得ることがわかりました。
その時、当の生徒がしみじみ「本は一冊だけ見て信じちゃいけんのじゃなあ」と言ったそうです。
私は、この生徒が気づいたように、一冊の本だけを信じて、わかった気になってしまうことがこわいなあと思っています。
「どうして?」「なぜ?」という疑問が自分の発見や考えを一歩前へすすめていくのだとしたら、ひとつだけの答えに子どもが納得させられてしまっては困るのです。
「国際交流がひと目でわかる」をキャッチフレーズとした、歴史上の人物に関する調べ学習用絵事典シリーズがありました。
このなかに日本の国際交流に貢献した人物として吉田茂や佐藤栄作、田中角栄がとりあげられていました。
たとえば佐藤栄作は「ニクソンと会談し沖縄本土返還を実現させ非核三原則による核拡散防止につとめ、ノーベル平和賞を受賞した」。
田中角栄は「断絶していた日中間の国交を正常化し、上野のパンダは日中国交回復の記念として中国からおくられた」という、いずれもみヒかい説明文がついています。
このことは事実ですから、これだけ読めば「立派な功績をあげた人」と子どもは受けとるでしょう
しかし佐藤栄作が返還させたという沖縄には、いまだに米軍の軍事基地が厳然と存在し、日本の主権がままならない現実だし、田中角栄はその後ロッキード疑惑で刑に服した金権政治家でもありました。
「ひと目でわかる」からと一冊の事典だけを鵜呑みにするのではなく、トンガ王国を調べ、「1冊だけ見てそれだけを信しちやいけんのじゃなあ」といった生徒のような気づきが大切です。
こうした主体的、批判的に情報を読み解くメディアリテラシーは、情報社会を生き抜いていく上で欠かせない力となりましょう。
(だから、子どもの本は面白い 広瀬 恒子著 新日本出版社p133-135)
もちろん科学は万能ではなく、未解明の現象は多くあります。
しかし、科学は事実(あるいは現実)をもとにして、ことがらを解明していく人類の知恵の集積です。
事実を観察し測定し、調査・実験し、その結果を整理・分析・総合などして事実を解明していく理論活動の総体です。
わからないことがあれば事実を確かめつつだれでも議論に参加できる公開性が生命です。
また実験などにより繰り返し事実を確認できる点も重要です。
そのような努力によって、科学はいま未解明なことでも、多くの科学者の協力によって、一歩一歩と解明・研究していき、やがて真理に到達するという開かれた体系です。
(哲学のすすめ 生きること、学ぶこと 鰺坂真 著 学習の友社 p27)
そこで、一般的に言って、またいくらか長い期間をとってみると、あらゆる種類の商品がそのそれぞれの価値どおりに売られているとすれば、利潤──個々のばあいの利潤ではなく、いろいろな事業の経常的かつ通常の利潤──は、商品の価格を法外に高くすること、つまりその価値を超過する価格で商品を売ることから生ずると考えるのは、ナンセンスである。
この考えの愚かしさは、これを一般化すればはっきりする。
人は、彼が売り手としていつも得するものを、買手として同じようにいつも損するであろう。買うだけで売らない人、消費するだけで生産しない人たちがいる、と言ったところで、役にはたたないであろう。こうした人たちは、彼らが生産者たちに払う分を、まず生産者たちからただで手にいれなければならない。
もしある人が、最初に諸君の金をとりあげておいて、あとで諸君の商品を買ってその金を返すのであれば、諸君は、諸君の商品をこの同一人物にいくら高く売ってもけっしてもうかることはないであろう。
この種の取引は、損失を少なくするかもしれないが、けっして利潤を実現するたすけにはならないであろう。
したがって、利潤の一般的性質を説明するためには、諸君はつぎの定理から出発しなければならない。
すなわち、諸商品は平均してその真実価値で売られる、そして、利潤はそれらの商品をその価値どおりに、すなわち、それらの商品に実現されている労働量に比例して、売ることによって得られる、という定理である。
もし諸君がこの前提にたって利潤を説明することができなければ、諸君にはとうてい利潤を説明することはできない。
これは、逆説であり日常の見聞とは相反するように見える。
地球が太陽のまわりをまわっていることも、また、水が非常に燃えやすい二つの気体からなりたっていることも、やはり逆説である。
科学上の真理は、もしそれを事物のまぎらわしい外観だけをとらえる日常の経験から判断するならば、つねに逆説である。
(マルクス著「賃金、価格および利潤」新日本出版社 p138-140)
「青年が科学の目を養うこと、ともに学ぼう!」
BY PINOCCHIO
長年、学校図書館司書をつとめるUさんからこんな話を聞いたことがあります。
中学で「国際理解」をテーマにした授業があり、ひとりの生徒がトンガ王国の人口を事典で調べていました。
たまたま別のもう一冊の資料を見たら、人口数が違っていておかしいなと気づきました。
どうして違うのか不思議に思い調べたところ、トンガには小さな島がたくさんある上、出かせぎに行く人がとても多い国なので年代による違いが出てくることもあり得ることがわかりました。
その時、当の生徒がしみじみ「本は一冊だけ見て信じちゃいけんのじゃなあ」と言ったそうです。
私は、この生徒が気づいたように、一冊の本だけを信じて、わかった気になってしまうことがこわいなあと思っています。
「どうして?」「なぜ?」という疑問が自分の発見や考えを一歩前へすすめていくのだとしたら、ひとつだけの答えに子どもが納得させられてしまっては困るのです。
「国際交流がひと目でわかる」をキャッチフレーズとした、歴史上の人物に関する調べ学習用絵事典シリーズがありました。
このなかに日本の国際交流に貢献した人物として吉田茂や佐藤栄作、田中角栄がとりあげられていました。
たとえば佐藤栄作は「ニクソンと会談し沖縄本土返還を実現させ非核三原則による核拡散防止につとめ、ノーベル平和賞を受賞した」。
田中角栄は「断絶していた日中間の国交を正常化し、上野のパンダは日中国交回復の記念として中国からおくられた」という、いずれもみヒかい説明文がついています。
このことは事実ですから、これだけ読めば「立派な功績をあげた人」と子どもは受けとるでしょう
しかし佐藤栄作が返還させたという沖縄には、いまだに米軍の軍事基地が厳然と存在し、日本の主権がままならない現実だし、田中角栄はその後ロッキード疑惑で刑に服した金権政治家でもありました。
「ひと目でわかる」からと一冊の事典だけを鵜呑みにするのではなく、トンガ王国を調べ、「1冊だけ見てそれだけを信しちやいけんのじゃなあ」といった生徒のような気づきが大切です。
こうした主体的、批判的に情報を読み解くメディアリテラシーは、情報社会を生き抜いていく上で欠かせない力となりましょう。
(だから、子どもの本は面白い 広瀬 恒子著 新日本出版社p133-135)
もちろん科学は万能ではなく、未解明の現象は多くあります。
しかし、科学は事実(あるいは現実)をもとにして、ことがらを解明していく人類の知恵の集積です。
事実を観察し測定し、調査・実験し、その結果を整理・分析・総合などして事実を解明していく理論活動の総体です。
わからないことがあれば事実を確かめつつだれでも議論に参加できる公開性が生命です。
また実験などにより繰り返し事実を確認できる点も重要です。
そのような努力によって、科学はいま未解明なことでも、多くの科学者の協力によって、一歩一歩と解明・研究していき、やがて真理に到達するという開かれた体系です。
(哲学のすすめ 生きること、学ぶこと 鰺坂真 著 学習の友社 p27)
そこで、一般的に言って、またいくらか長い期間をとってみると、あらゆる種類の商品がそのそれぞれの価値どおりに売られているとすれば、利潤──個々のばあいの利潤ではなく、いろいろな事業の経常的かつ通常の利潤──は、商品の価格を法外に高くすること、つまりその価値を超過する価格で商品を売ることから生ずると考えるのは、ナンセンスである。
この考えの愚かしさは、これを一般化すればはっきりする。
人は、彼が売り手としていつも得するものを、買手として同じようにいつも損するであろう。買うだけで売らない人、消費するだけで生産しない人たちがいる、と言ったところで、役にはたたないであろう。こうした人たちは、彼らが生産者たちに払う分を、まず生産者たちからただで手にいれなければならない。
もしある人が、最初に諸君の金をとりあげておいて、あとで諸君の商品を買ってその金を返すのであれば、諸君は、諸君の商品をこの同一人物にいくら高く売ってもけっしてもうかることはないであろう。
この種の取引は、損失を少なくするかもしれないが、けっして利潤を実現するたすけにはならないであろう。
したがって、利潤の一般的性質を説明するためには、諸君はつぎの定理から出発しなければならない。
すなわち、諸商品は平均してその真実価値で売られる、そして、利潤はそれらの商品をその価値どおりに、すなわち、それらの商品に実現されている労働量に比例して、売ることによって得られる、という定理である。
もし諸君がこの前提にたって利潤を説明することができなければ、諸君にはとうてい利潤を説明することはできない。
これは、逆説であり日常の見聞とは相反するように見える。
地球が太陽のまわりをまわっていることも、また、水が非常に燃えやすい二つの気体からなりたっていることも、やはり逆説である。
科学上の真理は、もしそれを事物のまぎらわしい外観だけをとらえる日常の経験から判断するならば、つねに逆説である。
(マルクス著「賃金、価格および利潤」新日本出版社 p138-140)
「青年が科学の目を養うこと、ともに学ぼう!」
BY PINOCCHIO
by dylj_west
| 2006-11-03 00:42
| かたるBAR
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